麻酔関連薬物

静脈麻酔薬・オピオイド(総論) -basic-

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総合知識
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オピオイドの副作用
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静脈麻酔薬とオピオイドって言ってもいっぱいあるで!どれを勉強したらいいん?

これも麻酔科専門医試験ではそこそこの種類が必要になりますが、周術期管理チームの試験においては、差し当たり以下の静脈麻酔薬・オピオイドを把握しておけば良いでしょう。

 

それぞれどんなことをおぼえないけんの?

麻酔科専門医試験ではそれぞれの薬物についてかなり突っ込んだ内容まで把握しておく必要がありますが、周術期管理チーム試験では以下の通り基本的なことのみが問われています。

  1. それぞれの薬物の簡単な作用・代謝・副作用

 

吸入麻酔薬と違って看護師さんたちもよく見たり使用したりすると思いますので、しっかりとおさえていきましょうᕦ(ò_óˇ)ᕤー

 

静脈麻酔薬やオピオイドに共通する知識を教えて

オピオイドに関してもそうですが、試験では静脈麻酔薬に共通する内容も問われています。麻酔科専門医試験ではそれぞれの半減期やタンパク結合率など細かなデータも問われていますが、ここでは大まかな説明に止めます。

ちょっと聞いてもいい?そもそもオピオイドって・・何?😅

通常よく使用されるフェンタニルやモルヒネなどは「麻薬」ですが、「オピオイド」に分類されます。麻薬とオピオイドは厳密には違います

麻薬とは、通常はモルヒネやヘロインのようなケシから生成される麻薬性鎮痛薬のオピエートやオピオイドを指すが(定義1)、法律上の用語として、法律で規制された薬物を指して用いられることもある用語である(定義2) Wikipedia『麻薬』

オピオイドは麻薬に分類されますが、麻薬だからオピオイドとうわけではありません。今回取り上げるケタミンも麻薬指定されている薬物ですが、オピオイドではありません(私が後期研修医になりたての頃は麻薬指定されていなかったのですが、乱用が問題になったらしく途中で麻薬指定になり使用のハードルが上がってしまいました・・)。

覚えるべき共通事項

  1. 静脈麻酔薬・オピオイドともに用量依存性に呼吸抑制作用をもつ(呼吸抑制作用が弱いものもある)。
  2. 静脈麻酔薬・オピオイド(特にレミフェンタニル)の多くは循環抑制作用(血圧低下)を持つ。
  3. 静脈麻酔薬(特にプロポフォール)は全身麻酔の急速導入に頻用される。
  4. 現代の麻酔では(吸入麻酔を使用しない場合)、鎮静を静脈麻酔薬、鎮痛をオピオイド(レミフェンタニルなど)により行うことがほとんど。

呼吸抑制作用について(い・・・息が・・・😫)

静脈麻酔薬・オピオイドの多くは呼吸抑制作用を持ちます。少量だと自発呼吸もしっかり保たれつつ良好な鎮静が得られますが、相対的に過量になると舌根沈下が生じたり、完全に呼吸が停止したりします。

その中でも、ケタミン、デクスメデトミジン(商品名プレセデックス)は比較的呼吸抑制が少ないとされています。現在では鎮静目的でケタミンを使用することはほとんどないと思いますが、デクスメデトミジンは局所麻酔薬(神経ブロック含)で行う手術や、集中治療室での人工呼吸中の鎮静にと大活躍です!ᕦ(ò_óˇ)ᕤ

周術期管理チームの試験では、分時換気量の低下により動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)の上昇が生じることが問われています。

 

循環抑制作用について(あーやっぱり血圧下がった・・)

ほとんど全ての静脈麻酔薬(鎮静薬)には循環抑制作用が多かれ少なかれあり、血圧が下がったり、心収縮力が落ちたりなどします(ケタミンだけは交感神経刺激作用により血圧が上昇します)。

中でも通常の全身麻酔で頻用されるプロポフォール、レミフェンタニルには比較的強い抑制作用があるため、特に高齢者の麻酔導入においては投与量を少なくしても血圧が急降下⏬するのをよく見ると思います。

そのため元々心不全があったり、冠動脈狭窄があるような場合にはできるだけ血圧を下げないように、循環抑制が少ないミダゾラムやフェンタニルなどが主に使用されます

全身麻酔と静脈麻酔薬(TIVAのほうが人気?)

全身麻酔の導入においては上述のようにプロポフォールを主とした静脈麻酔薬が頻用されます。特にプロポフォールは効果発現が速く、効果の消失も速いため調節性に優れています。それが麻酔導入だけでなく、術中の麻酔維持に使用されている理由でもあります。吸入麻酔薬を用いず、静脈麻酔薬のみで麻酔維持を行うことを全静脈麻酔(TIVA:Total Intravenous Anesthesia)といいます(まぁ知ってるでしょうけど😅)

プロポフォールによるTIVAは覚醒の質もよく、PONVの頻度も少なく、ほぼ全ての麻酔をTIVAで行う麻酔科医も多いですが二つだけ欠点があります。

この2つは麻酔科専門試験でも周術期管理チームでも問われている事項です。

吸入麻酔薬は麻酔回路に取り付けられているサンプリングチューブにより呼気の二酸化炭素分圧だけでなく吸入麻酔薬の濃度も測定ができます。また、その濃度から予想される麻酔効果も個人差が少ないとされています。

静脈麻酔薬はそういった持続的な濃度をモニタリングすることができません。TICポンプやPCソフト、アプリなどで血中濃度の予測シミュレーションを行うことができますが、それはあくまでも実測値ではなく予測値です。また、その予測血中濃度から得られる麻酔効果も個人差が大きいとされています。つまり、普通はこれくらいだったら寝ているよね、意識ないよね、と思われる濃度でも実は起きている!😵(術中覚醒)ということが起こり得ます(実際にたくさんの報告があります)。特にプロポフォールは揮発性麻酔薬やベンゾジアゼピン系薬物と比較して健忘作用が弱いとされています。

それをできるだけ防ごうということで、BISやSedLine®をはじめとする脳波モニタが使用されます。ただしこれらのモニタは鎮静度の指標にはなりますが、静脈麻酔薬の血中濃度を測定しているわけではもちろんないので、術中覚醒を100%防ぐことができるわけではありません。

オピオイドについて

代表的なオピオイドは上でも挙げたようにフェンタニル、レミフェンタニル、モルヒネ、ペチジンなどです。これらは体外から投与されるものですが、体の中でもオピオイドは合成されます(内因性オピオイド)。脳内麻薬と呼ばれるエンドルフィンなんかが有名ですね(ランナーズハイの原因として有名なやーつです)。エンドルフィンは内因性オピオイドであるということなんと周術期管理チーム試験で問われてます

オピオイドは術中の鎮痛だけでなく、術後にも頻用されます。局所麻酔薬とともに硬膜外に持続投与されたり、経静脈的に持続投与されたりしていますよね(近年IV-PCAとして爆発的に普及)。

フェンタニルはボーラス投与も持続投与もされますが、持続投与開始から血中濃度は徐々n上昇していくため、最大効果が発現するのには投与速度にもよりますが、ある程度時間が必要なのを知っておいてください。

補足ですが、術後鎮痛としてオピオイドを投与している場合でもNSAIDsやアセトアミノフェンは併用されます(出題あり)。

オピオイドは強力だけど副作用もある

オピオイドは強力な鎮痛薬で手術にも術後にもとても有用な薬物です。静脈麻酔薬(プロポフォールをはじめとする鎮静薬)にはアレルギーや呼吸・循環抑制以外のこれと言った副作用はないのですが、オピオイドには様々な副作用があり、主なものは以下の通りです。

これらの副作用は術後だけでなく、緩和ケアでもその対策が問題になります。オピオイドの副作用に関してはまた別の投稿で取り上げたいと思います。

 

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