循環作動薬と一口に言ってもいろいろなものがありますが、basicでは昇圧薬と降圧薬とに簡単に分けて整理しておきたいと思います。
周術期管理チーム試験においては全然深く聞かれてはいません笑。問われていることは以下のことのみです。
- 各種循環作動薬の代表的作用(超簡単🤗)
- 脈拍数を減少させる作用を持つもの(超簡単🤗)
- エフェドリンについて
これだけだと書くこともあまりないので少し補足して説明したいと思います。
このページ(次の投稿)を読むと解けるようになる(!?)問題
循環作動薬の薬効
- 2016-B10
- 2015-A26
エフェドリンについて
- 2016-B53
血圧を上げるためには・・・
血圧を上げるためには、生理学のところでお話する予定ですが、ざっくり言って前負荷を増やすか、心拍出量を増やすか、後負荷を上げるかが必要になります。それぞれの言葉に関しても後々解説していきます。
昇圧薬はこれらの何かまたは複数に働きかけて血圧を上昇させます。降圧薬はその逆の作用です。
手術室でよく使う昇圧薬を示します。これらについて簡単に解説していきます。
- エフェドリン
- フェニレフリン
- ドパミン
- ドブタミン
- ノルアドレナリン
- アドレナリン など
エフェドリン(40mg/mL=1アンプル)
手術室でおそらく最も使用される昇圧薬の1つではないでしょうか?上のアンプルの画像のエフェドリンの横に「ナガヰ」と書いてありますが、これなんのことがわかりますか?
我らが日本の長井長義という江戸〜昭和初期を生きた薬物学者が初めてマオウからエフェドリンを抽出しました。そのため今でも名前が書かれているのですね。
1アンプルは40mg/mLで、通常1mlが4mgになるように希釈することが多いです。1回投与量としては4〜8mgです。
エフェドリンについて知っておかなければならない知識を以下に示します。
- α1、β1、β2アドレナリン受容体を刺激して作用を発揮する昇圧薬です(元は気管支喘息治療薬)
- 昇圧機序はα1受容体刺激による末梢血管抵抗上昇、β1受容体刺激による心拍出量増大(心収縮力増大、心拍数増加)によります。
- 短時間に頻回投与することで作用が減弱する(タキフィラキシ)
血管や心臓やその他の臓器にはα、β受容体と呼ばれる受容体があって、各臓器でいろいろな作用を起こします。血管のα1受容体が刺激されると血管が収縮し後負荷が増大することで血圧が上昇します(末梢の静脈も収縮し、その分静脈還流量も増加し前負荷も増大します)。心臓のβ1受容体が刺激されると心拍数が増加し、心収縮力も増加することで血圧が上昇します。気管支喘息の治療として用いられていた背景は、β2受容体の刺激により気管支が拡張するためです。
③のタキフィラキシについてはadvancedで解説しようと思います。さしあたりそういう特徴があるのだなと思っておいてください。
最大効果発現は投与後4〜5分程度です。エフェドリン投与後はきちんと血圧が上昇しているかを評価しましょう(ただし、投与直後に血圧を測ってもすぐには上昇していません)。
フェニレフリン(1mg/1mL=1アンプル)
続いてフェニレフリン(商品名:ネオシネジン)です。こちらも手術室での昇圧薬としてはよく目にするものでエフェドリンと双璧をなしていると思います。患者やバイタルサインによっても使い分けますが、麻酔科医によってエフェドリンが好きな人とフェニレフリンが好きな人に別れます🤗 私はエフェドリンの方が好きですが。
1アンプルは1mg/1mLで、10倍あるいは20倍希釈されて使用されます(0.05mg/mlあるいは0.1mg/ml)。1回投与量としては0.05mg〜0.2mg程度です。
- ほぼ純粋なα1受容体刺激薬です
- 血管のα1受容体を直接刺激するため(エフェドリンは間接的な刺激がメイン)、エフェドリンに比べて効果発現が速いという特徴があります。そしてすぐ切れる(数分以内)
- 頻回に投与が必要になる場合などは持続投与が行われることもあります。
- 投与後に反射性の心拍数低下(徐脈)を起こすことが多い(PSVTの治療にも用いられる)。
ここからはざっくり説明します↓(詳しくはadvancedaで)
ドパミン
商品名で有名なのはイノバンですかね。α1、β1、ドパミン受容体に作用して効果を発揮します。聞いたことがあるかもしれませんが、低用量ではβ1作用、ドパミン受容体作用、高用量になるとα1作用が加わってきます。が、そんな細かなことはここではいいでしょう。
この薬も好き嫌いが別れます。そして私は嫌いです😅。頻脈になって不整脈が出たりする頻度が高いイメージがあります。昇圧作用もぜーんぜん効かない人もいれば、微量で跳ね上がる人もいたりで・・嫌い笑。そんなイメージないです?😅
ドブタミン
ほぼ純粋なβ受容体刺激薬です。β1作用により心臓に頑張ってもらうとともに、末梢血管の拡張作用も持っています(β2作用)。肺血管拡張作用もあるため、肺動脈圧が高い場合にも使用されます。
心収縮力アップに加えて末梢血管拡張による後負荷の軽減があるため、心拍出量がより増加します(心臓を叩く一方のドパミンよりは少し優しい)。
アドレナリン
手術室ではそんなに使うことはないでしょう。エピネフリンとも呼ばれます。使用する場面としては小児心臓手術や人工心肺からの立ち上がり不良などの場合を除いては、予期せぬ心停止でCPRをする場合や、アナフィラキシーが起こってしまった場合(アナフィラキシーには第一選択)でしょう。どちらにしろろくなもんじゃありません😫😫
強力なα1作用、β1作用、β2作用を持ちます。基本的に緊急使用薬剤のため、現在では初めからシリンジに充填されたプレフィルドのシリンジがあり、当院でも採用しています。
👆テルモのプレフィルドのシリンジ
ノルアドレナリン
主に強いα1作用とそこそこのβ1作用を持つ。ノルエピネフリンとも呼ばれます。強力な血管収縮による血圧上昇作用を持つため、敗血症性ショックなどの高度の低血圧時にもよく用いられます(それでもなかなか上がらないことが多いですが😓)。
強い血管収縮作用がゆえに、少し前までは中心静脈ラインから投与すること、となっていましたが、最近では末梢静脈からの投与も広く行われているようです(高濃度で投与する際にはやはり中心静脈ラインからの方が無難でしょう)。