生理学

肝臓・腎臓のさわり(簡単な生理とか)①-basic-

肝臓と腎臓についてですが、この分野の出題が少ないので一つにまとめています。今後少し詳しめにまとめる際には別個にネチネチ書いていきたいと思います😊

このページを読むと解けるようになる(!?)問題

肝臓分野
  • 2014-A12
  • 2014-B15
腎臓分野
  • 2018-A49
  • 2016-A4
  • 2016-B12
  • 2014-B14

 

肝臓のさわり

麻酔科領域で問題となる肝臓分野の疾患と言えば、ダントツ肝硬変です。軽度の肝機能障害(脂肪肝や薬剤性などで軽度AST/ALT上昇など)はあまり問題となることはありません。

肝臓は実に薬物代謝やタンパク質合成、グリコーゲンの貯蔵、凝固因子の合成など様々な機能を有しています。肝不全のヤバさは腎不全のヤバさの比ではありません😫(腎不全はとりあえず透析を回すということができますので)。

主な肝機能についての出題が一度ありましたので、まとめておきます。

主な肝機能
  • 様々な薬物の代謝
  • いろいろなタンパク質(アルブミンや凝固因子など)の合成
  • グリコーゲンの貯蔵
  • アンモニアの代謝(肝不全時の肝性脳症と関連)

肝機能の検査

術前にはいろいろな血液検査がなされますが、主なものはAST、ALTなどの逸脱酵素(肝細胞の障害があると上昇)が上昇していないか、アルブミン、凝固因子などの合成能に問題がないかどうか、アンモニアなどの上昇がないか(肝性脳症と呼ばれる病態と関連があります)などがチェックされます(もちろん他にもたくさんあります)。

主要なタンパク質であるアルブミンは肝臓でのみ合成が行われます。

それとは別に肝予備能の検査として行われるのがICG(インドシアニングリーン)試験」と呼ばれるもので、緑色のきれいな色素を静注します。投与された色素は一定時間以内に速やかに体外に排出(尿中)されるのですが、肝機能が低下しているとそれが遅延します。投与後15分で %残留している場合を

 

肝機能障害・肝硬変のさわりだけ

肝臓の障害は少し肝逸脱酵素が一時的に上昇する程度の軽いものから肝硬変にいたるものまで様々です。肝硬変に関しては、「各種合併症」のページでまとめたいと思いますので、ここでは最低限の知識だけまとめておきたいと思います。

肝硬変のポイント
  1. 肝硬変の原因には、アルコール性、ウイルス性、薬剤性、自己免疫性、脂肪肝性によるものなど様々。
  2. 上記の原因で最も多いのはB型やC型肝炎ウイルスなどのウイルス性(80%)。
  3. 凝固機能異常(凝固因子合成低下)や血小板減少アルブミン低下食道・胃静脈瘤腹水呼吸状態の悪化肺内シャントの増加 ※肝肺症候群)などが症状の進行とともに見られるようになる。
  4. 各種薬物代謝の障害(麻酔科領域では局所麻酔薬や筋弛緩薬などの作用時間延長など)
  5. 術後の肝機能障害の原因としては最多

呼吸状態の悪化は主に胸水貯留による無気肺の増加や、肺血流量の増加(肝硬変の影響により生じます)による肺内シャント増加(呼吸生理で少し触れましたが、換気に比べて血流量が増えすぎてしまうため喚起されずに心臓に戻る血液が増える)により低酸素血症が生じてしまいます。

また、肝機能障害が重篤になると、免疫能の低下などにより易感染性や創傷治癒の遅延が生じます。肝臓が悪いとろくなことがないのです・・😫

 

腎臓のさわり

腎臓は尿を作って老廃物を出しているだけだと思われがちですが、その他にも色々なホルモンを分泌したりで、肝臓と並んで体の恒常性を維持するために日夜奮闘😤しています!

腎臓についての基礎知識

腎臓についての基礎知識としては、腎機能の検査(後述)のこと、ホルモンのこと、腎血流量と尿生成についてのことが簡単に問われていますので、さらりとさらっておきましょう😊

ホルモンについて

試験では、分泌するかどうかを選ぶ程度にしか出題されていませんが、それぞれどのようなホルモンかはもちろん把握しておきましょう。

エリスロポエチンは貧血の治療で用いられる薬剤として有名ですが、腎臓でも産生され、骨髄に存在する各種造血前駆細胞を刺激して赤血球の産生を促進します

腎不全患者ではよく貧血が見られますが(腎性貧血と呼ばれる)、これは腎機能障害によりエリスロポエチンの産生が低下しているためです。

レニンは腎臓の傍糸球体細胞と呼ばれる部分から分泌されるホルモンで、RAA系の出発ホルモンで血管収縮に深く関与するホルモンです。レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAA系)って聞いたことないですか(あれ?ない?笑)?。改めて内分泌のところで説明したいと思います。

腎血流量について

腎臓の簡単な仕組みは小学校〜高校で少しは習っていると思います(え?忘れた?笑)。

腎臓は小さな臓器(1個は握り拳程度の大きさ)ですが、体の中の老廃物などを処理しなければならないため血流量は多く、心拍出量の20〜30%程度を占めます(単位重量あたりの流量としては最大)。その豊富な血流を元に原尿(おしっこの元)が実に180L/日も生成されます(実際の尿量は健康成人で1.5L程度ですから、99%は再吸収を受けます)。腎血流量が低下すると尿量は減少します

この腎血流量は血圧やホルモン、薬物、麻酔など様々な要素により増加したり減少したりといった影響を受けます。代表的なところでは、ドパミンによる腎血流量増加(その影響で俗にドパミン尿と呼ばれるうっすい尿が大量に出ることがあります)、NSAIDsによる腎血流量減少(NSAIDs自体腎臓にはあまり優しくないですよね)があります。ちなみに麻酔領域でよく使用されるフェンタニルは腎血流量に影響しません

腎機能の評価の指標について

腎機能の関係する術前検査としては、血清BUN(尿素窒素)や血清Cr(クレアチニン値)、クレアチニンクリアランス(CCr)などがよく用いられます。

BUNの低い信頼性について

BUNは血中尿素窒素のことで、GFR(糸球体濾過率)を反映し、腎機能障害がある場合には上昇します、体液量(脱水)や腎血流量低下(心不全など)、タンパク質摂取量や代謝の状態、併存する肝疾患、消化管出血などにより影響を受けるため、この上昇だけで腎機能障害がある!と言えるほど鋭敏な指標ではありません

Cr(クレアチニン)について

BUNよりも腎機能をよく反映します。タンパク質の摂取量が多かったり、筋肉量が多いと増加します(男性は女性よりも基準値が高く設定されています。また妊婦ではさらに低くなります)。クレアチニンはほとんど再吸収されずに尿中に排泄されるために、血中の濃度が糸球体の濾過機能と反比例関係を示します(つまり腎機能が低下して濾過機能が落ちれば血中の濃度が上がる)。

しかし軽度の腎機能障害ではほとんど上昇せず、ある程度障害が高度になってから上昇し始めるので、高齢の女性がある程度の上昇をしている場合、それ相応の腎機能低下があるものとして見る必要があります。

クレアチニンクリアランス(CCr)はGFR(糸球体濾過率)の近似として用いられる指標です。つまり腎臓がどれくらい老廃物を体外に排泄できるかどうかを見るためのものです。尿中のクレアチニン濃度と尿量を用いるためある程度の蓄尿が必要です(2時間の蓄尿や24時間の蓄尿が行われる)。簡易式は以下の通りです。

Ccr(mL/分) = (Ucr × V)/ Scr

※Ucr:尿中のクレアチニン濃度(mg/dl) Scr:血清クレアチニン濃度(mg/dl) V:尿量(ml/分)

クレアチニンクリアランスは正常では90以上です

これとは別に蓄尿を行わずに、性別、年齢、体重、血清クレアチニン値からクレアチニンクリアランスを推定しようという予測式(Gockroft-Gault式)や、血清クレアチニン値と性別からGFRを推定する方法もあります。推定されたGFRは、eGFR(estimatedのe)と呼ばれます。

Gockroft-Gault式(男性)

  • (140 − 年齢) × 体重kg / ( 72 × 血清クレアチニン値mg/dl)
  • 女性はこれで求めた値に0.85をかけたもの

eGFRの計算式(男性)

  • 194 × 血清Cr-1.094 × 年齢-0.287
  • 女性はこれで求めた値に0.739をかけたもの
  • どうせ頭では計算できないので(笑)覚えなくてもいいです。

補足(乏尿・無尿の定義)

乏尿や無尿という言葉はよく用いられますが、その定義は覚えておいてください。

  • 乏尿:400ml/日以下(成人)、あるいは0.5ml/kg/時以下の場合
  • 無尿:100ml/日以下(成人)

 

腎臓生理のおすすめ本

腎臓の本も数多く出版されており、その内容も易しいものから高度に専門的なものまで様々です。ついでに透析系のものも紹介しておきます。

優しめのやーつ

実はあまりないのですが、私が手にとった中ではこれかなと・・・笑

真面目に学ぼうとする(笑)研修医にはかなりおすすめです😊

レジデントのための腎臓教室 前島明人著(4,950円)

名著と呼ばれる1冊だと思います!!

こういうことだったのかCHDF 小尾口邦彦著 (2,200円)

よく意味も分からず「術後CHDF回しましょうか」っていう研修医を卒業できる(笑)本だと思います。CHD、CHF、CHDFの違いが分からない人に。安いし!!