手術前はさまざまな検査が行われますよね!周術期管理チーム試験でもどういったものが術前一般検査に含まれていて,検査データの常識的な数値がどのくらいかが問われています.これも普段から患者データをきちんと見ていれば難なく答えられる程度の問題なのでそれほど心配しなくても良いかと思います.
術前の“一般”検査には何が含まれるの?
術前には大小さまざまな検査が行われます.合併症が多かったり,心臓手術のような大きな手術になると検査は多くなります.逆に局所麻酔で行われる小手術などでは過剰な検査を避ける必要があります.特に海外では検査にかかる費用が高いため,検査は必要最小限にされています(その点日本は多少ユルイですよね😅)
通常,ルーチンの一般検査には以下のようなものが含まれます.
- 血液検査(血算・生化学・凝固検査・血液型・感染症)
- 尿検査
- 心電図検査(12誘導)
- 胸部X線検査
これらの検査でスクリーニングを行い,予期せぬ異常値や併存合併症,予定される手術に必要な検査を追加していくことになります.
試験で問われて間違いそうなのは,「心臓超音波検査」「呼吸機能検査(スパイロメトリや血液ガスなど)」は一般検査には含まれないというところでしょうか.また,血栓症が疑われる患者ではD-ダイマーも測られますね(特異度が低いですが・・).
補:血液検査
通常の血液検査には以下のようなものが含まれますよね.もちろんこれらのおおよその基準値は把握しておく必要があります(知ってますよね?).あえて数値は載せませんので,各自教科書や検査データ表などで確認しておいてください!
- 赤血球数,ヘマトクリット値,ヘモグロビン値
- 白血球数,白血球の分画(好中球や好酸球など)
- 血小板数
- 血清総タンパク,アルブミン
- 肝酵素(ALT,ALT,LDHなど)
- 腎機能(尿素窒素やクレアチニン)
- 血糖値(糖尿病患者ではHbA1cも)
- 凝固系検査(PT,aPTT)
- 電解質(Na,K,Cl,Ca)
- その他(アミラーゼやクレアチニンキナーゼなど)
ちなみに試験では以下の項目の数値について問われています(基準値内はどれか,パニック値はどれか,など)
- ヘモグロビン(血色素.男性の方が女性より多いよ)
- 血清アルブミン
- カリウム
- ナトリウム
- クレアチニン(男性の方が女性より多いよ)
- 乳酸脱水素酵素(LDH)
その他の追加検査にはどのようなものがあるの?
心臓系の検査(心エコー,負荷心電図など)
これらの検査は原則として不整脈など心電図異常があったり,虚血性心疾患患者またはそれが疑われる患者,心不全の既往がある患者,弁膜症の既往がある患者,高齢者の大手術や心臓外科手術の術前検査で必要に応じて選択されます.
また,必要に応じて通常の胸壁心エコー(TTE)だけでなく,経食道心エコー(TEE)が行われることもあります.
呼吸機能の検査(スパイロメトリ,血液ガスなど)
長期喫煙患者,慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある患者や呼吸症状がある患者などで行われます.スパイロメトリにより閉塞性肺障害,拘束性肺障害の判別が可能です.
血液ガスは呼吸機能のみの検査というわけではありませんが,酸素化能や換気能,電解質異常や電解質など幅広く見ることができる便利な検査で,手術室では日常的に検査されていますね.
スパイロメトリの注意点として,「きちんとした姿勢でかつ検査の指示に従える患者」でないと意味がないことがあります.寝たきりであったり,呼吸による痛み(鎖骨の骨折など)がある場合には適切に行うことができません.検査データのみを見て呼吸自体に障害があると早とちりしないようにしましょう.
その他の画像検査(CT,MRIなど)
その他必要に応じて胸部CTや腹部CT,頭部MRIなどが行われます.ルーチンの検査ではなくあくまで手術自体の検査という感じですかね.
検査に関わるおすすめ書籍
やりなおしの検査値・パニック値対応(前川芳明著 メディカ出版)
この本はあまり高くもなく,分厚くもなく(150ページくらい),必要最低限の知識が網羅されている感じです.説明もシンプルでわかりやすいので,看護師さんが初めに手に取るハンドブックとしてはとても良いのではないでしょうか(^^)
異常値の出るメカニズム第7版 医学書院
血液検査についてがっつり学びたい人にはもはや定番となっている本です.その名の通りメカニズムについてきちんと説明されているので,読み切るのはしんどいです(すみません😅).新人の看護師さんには少々厳しいかもしれませんが,きちんと勉強しようとすると外せないような気もします.
色々な教科書に検査データに関する項目はありますが,血液検査に特化した本で一番有名なやつなので職場に一冊あるといいですね.