生理学

循環生理①-basic-

呼吸生理に続いて、循環生理もこんなブログで語れるボリュームではありません・・が、とりあえず周術期管理チーム試験に問われていることから順に潰していき、最終的にいろいろな特集ができればいいなと考えてます!

このページを読むと解けるようになる(!?)問題

臓器血流について
  • 2019-B16
  • 2016-B3の一部
  • 2015-A54

実はこれしか問われてないんですよね・・😅

それだけだとあんまりなので簡単に血圧を規定する因子なんかを話しておきたいと思います。

臓器血流量について

心臓は身体中に血液を送り出していますが、何のためかと言われれば、主に「臓器に血液(酸素)を送るため」ですよね。

臓器側としては、しっかり酸素を供給してもらわないと困るので、血圧の少々の増減(ちなみに臓器血流は平均血圧に依存します)で血流が増えたり減ったりしたら困ります。また、代謝の多少によっても必要な酸素必要量が違ってきます。そこで多くの臓器には「血流の自動調節能」と呼ばれる能力を持っています!(具体的なメカニズムはものすごーく複雑です)。

臓器血流の自動調節能

ここを失ってしまっては生命維持にこまる!というような臓器、例えば脳や脊髄、心臓(冠動脈)や腎臓などは血流の自動調節能を持っています。逆に皮膚や筋肉、消化管などはすぐに生命に直結するわけではないので、そういった機能がありません

それぞれの臓器血流が維持される血圧の範囲を細かく覚える必要はありませんが、おおよそ60〜160mmHg前後の平均血圧で臓器の血流は一定に保たれます。この範囲を下回る場合、また上回る場合には、臓器血流は血圧に比例します。

よく問われるのは、「慢性高血圧患者では、この自動調節が働く範囲が高い方にずれている」ということです。例えば60〜160mmHgの範囲内ではうまく調節できていたのが、調節できる範囲が80〜180mmHgなどにずれるということです。

これで何が困るかというと、自動調節が効く下限の血圧が上がることで、低血圧が生じた場合にその臓器血流が血圧に依存して減少してしまうということです。そのため高血圧患者においては、脳虚血や心筋虚血などが起こりやすいということになります。

補足ですが、高血圧患者でも投薬により血圧が良好にコントロールされている場合にはこの自動調節の範囲は元に戻ります。やばいのはコントロール不良患者や、未治療のひどい高血圧を持っている患者です!😩

血流が多い臓器と少ない臓器

臓器ごとに血流量は異なります。臓器の血流量は通常100gあたりの血流量で示されます(ml/100g/分)。血流量の多い3位までは覚えましょう。

100gあたりの臓器血流量が最も多いのは・・

腎臓です!何と420ml/100g/分で、肝臓などと比べてとても小さいのに心拍出量の何と25%を占めます!(大体400と覚えましょう)

続いて第2位は心臓で84ml/100g/分!体の要のポンプですから当然でしょう(心拍出量の5%)。(大体80と覚えましょう)

第3位は脳です!54ml/100g/分です。血流量自体は腎臓や心臓に比べて少ないですが、臓器の大きさ自体が大きいので心拍出量の14%程度を占めます。(大体50と覚えましょう)

補足として、心拍出量に対する割合が最も大きいのは肝臓です(でかいからね!)※出題されてます。

 

要点まとめ
  1. 臓器血流は平均血圧により規定される。
  2. 重要臓器にはある一定範囲の血圧では血流の自動調節能を持つ。
  3. 自動調節能の範囲からずれると臓器血流は血圧に依存する。
  4. コントロールされていない高血圧患者では、臓器血流の自動調節範囲は高い方にずれている。
  5. 単位重量あたりの血流量は多い順に、腎臓→心臓→脳。
  6. 最も血流量が多い臓器は肝臓。

 

血圧の規定因子(簡単に)

血圧の規定因子としてはよく次のように表されます。

平均血圧 = 心拍出量(1回拍出量×心拍数) × 末梢血管抵抗

ちなみにこの式は昔中学校で習った(はず😅)のオームの法則の式に似ていますね(V=IR:電圧は電流に抵抗をかけたもの)。

ただし、人間の体が単なるホースのようなもので一定の血液が流れているとした場合の話で、実際には血流には拍動がありますしそう単純なメカニズムではありませんが、考える時に整理しやすいのでまずはこの式を覚えましょう。

つまり、血圧が下がる時には、1回拍出量が少なくなっている、心拍数が(極端に)落ちている、末梢血管抵抗が低下している(よく末梢が開いていると言われますね)のどれかが起きていると考えることができます。

1回拍出量が低下している場合

心拍出量が減少する原因としては、前負荷(静脈還流量)が減少している、心筋の収縮力が落ちている、後負荷(主に末梢血管抵抗)が上昇している、があります。ほら、こうしてバラバラにしていけば原因が見えてくる気がしませんか?(実際にはいろいろな要素や代償反応などが複雑に絡み合っていますが)。

下にはいろいろ書きましたが、通常多く見られるのは出血による循環血液量低下による静脈還流減少です。この場合には心拍出量(1回ではなく1分間)を維持するために、代償性に心拍数が増加することが多いです。この場合の治療はもちろん、輸液(や輸血)になります。

静脈還流量が減少する

では、静脈還流量が減少するとはどういう時かというと、一番考えやすいのは出血などで循環血液量自体が少なくなっている場合です。これは想像しやすいですね。
もうひとつは少し想像しにくいかもしれませんが、胸腔内圧が上がって血液が心臓に入りにくくなっている状態です。代表的な原因としては、緊張性気胸などです。

そして、麻酔科医が遭遇したくない疾患として、肺塞栓症があります。これは血栓が肺動脈につまってしまって(または部分的につまって)血液が肺に流れず、肺に流れないということは肺静脈を取って左心系(左心房・左心室)に血液が還ってきません。

心筋収縮力が低下する

続いて心筋収縮力が低下する(打ち出す力が弱くなっている代表は心不全です。心不全の原因としては急性のもの慢性のものも含めて様々なものがありますが、急性期に遭遇することが多いのが、心臓弁膜症(大動脈弁や僧帽弁の狭窄症や逆流症)の増悪や、急性心筋梗塞などです。
その他、通常用いる静脈麻酔薬や吸入麻酔薬は心筋の収縮力を低下させるため、血圧低下が起こりやすくなります。

後負荷(打ち出す先の抵抗)が高い

最後に後負荷が高い、です。この場合は即血圧が下がるということはありません。末梢血管抵抗が高いということは、上記の式の右辺が大きくなるということなので血圧はむしろ上がります(血管収縮薬の効果はこのためです)。血圧は上がりますが、心拍出量は低下します。このあたりはバランスの問題となります。
大動脈弁に狭窄があると、心臓の出口が狭いということなので、一生懸命押し出そうとしても血液があまり出て行かない状態になります。これも常に血圧が低いというわけではなく、心収縮力が麻酔薬などで抑えられたり、後述する末梢血管抵抗がさがったりすると合わせ技で極端に血圧が下がることがあります。

心拍数が低下している

心拍数が少々減少したところで血圧はあまり変わりませんが、極端に低下(20〜30台など)するとさすがに下がってきます。
心拍数が低下する病態としては、迷走神経反射(急な体位変換や眼球の圧迫、子宮や腹膜の急な牽引など)や、レミフェンタニルの使用循環作動薬(β遮断薬など)の使用です。
この場合はアトロピン(副交感神経遮断薬)や循環作動薬(β刺激薬など)を用いると血圧が上昇します。

末梢血管抵抗が低下している

これはホースで考えてもらえればイメージしやすいと思いますが、普通にホースで水をちょろちょろと出している状態で、先端をつまんで細くするとピューつと飛び出しますよね。狭くすることで外に水がでにくくなりホースの内圧(生体であれば血圧)が上昇します。そのためピューつと飛び出すわけですね。解除すると内圧が低下しますね。
これが生体で起こると血圧が低下します。末梢血管抵抗が低下する病態としては、麻酔薬や降圧薬(血管拡張薬など)や、敗血症やアナフィラキシーショック(アレルギー反応の重症型)などがあります。

 

循環生理おすすめ教科書

この分野はあんまりあっさりした簡単な教科書がないんですよね・・😅なので、ある程度きちんと学ぶのは大変です!

麻酔・集中治療のための 新呼吸・循環のダイナミズム

外先生の教科書で、私的バイブル!です。内容は濃い〜・・・ですが、できるだけ簡単な表現で丁寧に説明していただいている印象です🤗

どれか一冊と言われればこれを挙げたいと思います!

臨床にダイレクトにつながる循環生理

タイトルに惹かれて買ってしまう系の本です😅

非常に丁寧に詳しく書かれているのですが、文字ビッシリで読むのには精神力を要します。看護師さんがはじめに手を出す本ではないと思います。

研修医〜麻酔科後期研修医の先生方がじっくり読むには良い本だと思います。元々外国の本らしく、要所要所に復讐問題が付けられていて理解の助けになります。

ハーバード大学テキスト 心臓病の病態生理

リアルガチの教科書です🤗

ただ、内容は素晴らしい。昔はモノクロだったのですが、第4版ではフルカラーになり非常に美しい本に仕上がっています。

丁寧に詳しく丁寧に詳しくといった感じで、病態と生理学を相互に学ぶのに最も適した本ではないでしょうか?文章も内容の高度さに比べて理解しやすい訳になっています(翻訳者の先生方、ありがとうございます!)

この本を読破して身につければ理論武装は完璧です笑