モニタリング

呼吸モニタリング①パルスオキシメータ-basic-

いつもみんなのそばにいる青いやつ(青くないのもあるけど)。そう、経皮的酸素飽和度モニタ。いつでもどこでも使われていますが、意外と歴史は浅くて、今還暦を迎えられている先生方が現役バリバリの第一線だった頃は、手術室でも全ての部屋にあったわけではないんですよ〜!(今の若い子がスマホがなかった頃を想像できないのと同じような感じですかね😊)。

出題内容としては、測定原理に関わるもの、測定値に影響を与えるものの二つの内容で、これは麻酔科専門医試験でも同様です。

このページを読むと解けるようになる(!?)問題

測定原理に関すること
  • 2017-A43
  • 2016-A29
  • 2014-B26
測定値に影響するもの
  • 2019-A19
  • 2018-A45
  • 2015-B2

 

酸素飽和度って何?どうやって測定してるん?

ひとーつ、酸素飽和度とはぁ

酸素飽和度、またはサチュレーションとかはよく言いますけど、要はヘモグロビンが酸素とどのくらいくっついているかです。酸素は赤血球に含まれるヘモグロビンに結合して組織に運ばれていきます。中には酸素とくっついているものとくっついていないものがあるわけです(厳密には1つのヘモグロビンには4つくっつくことができるので、その割合がどーたらとかありますけど、それはまた今度🤗)。

この酸素とくっついているヘモグロビンがヘモグロビン全部の中でどれくらいの割合なのか、を表したのが酸素飽和度です。肺などに問題がなければ通常95%以上ですよね。

ふたーつ、どうやって測定してるん?

細かな原理は難しいのですが、まずは複数の波長の光(多くは660nmの赤色光と940nmの赤外光)を当てて、その光がどの程度吸収されてしまうのかを見ています。と言うのもヘモグロビンは酸素がくっついている(酸素ヘモグロビン)場合と、酸素がくっついていない(還元ヘモグロビン)場合とでは光の吸収の度合いが違います。その違いを元に測定を行なっています

ちなみに酸素がくっついている血液が多い動脈が赤くて、酸素が離れている血液が多い静脈で色が違うのは、光の吸収の違いが違っているせいです。

もう一つ、大事なことがあります。測定されている酸素飽和度は”動脈血”酸素飽和度ですよね?でも測定ぶには当然ながら静脈血も流れています。そのまま測定したら混ざってしまってよく分からなくなりそうですよね?

でも大丈夫👍。動脈は知っての通りドクンドクンと拍動してますよね?静脈はしてません。酸素飽和度モニタは拍動成分だけを拾うので、静脈血に騙されたりはしません😤 ちなみにその副産物としてパルスオキシメータでも心拍数が測定できます(モニタの青い心拍数です)。

 

ポイントまとめ
  1. 酸素飽和度とは全ヘモグロビン(酸素ヘモグロビンと還元ヘモグロビン)のうちの酸素ヘモグロビンの割合を表したもの。
  2. ヘモグロビンの吸光度(酸素ヘモグロビンと還元ヘモグロビン)の差を利用して測定している。
  3. 拍動(動脈)を利用して動脈血のみの測定をしている。

 

測定値に影響を与えるもの

完璧なモニタリングはありません。一般的に用いられているモニタリングもいろいろなものに影響を受けてしまいます。パルスオキシメトリもその例外ではなく、様々なものに影響を受けて測定値に異常が生じたり、測定ができなかったりといったことが起こります。大きく分けると以下のようなものがあります。

測定値に影響を与えるもの
  1. 循環動態の悪化
  2. 低体温
  3. 体動
  4. 様々な色素
  5. 異常ヘモグロビン

ただし、「拾えてないだけだよ」と言って放置していて本当に酸素化が悪くなっていることもありますので、要注意です!「何かおかしい」と感じる場合には血液ガス測定なども行う必要がある場合もあります💉

循環動態の悪化(末梢冷たっ)・低体温☃️

上述の通り、パルスオキシメータは(主に)指の動脈の拍動成分を元に酸素飽和度を測定していますので、その拍動そのものが感知できる下限を下回ってしまえば測定ができません

ショック状態や低体温時には末梢の動脈は収縮してしまいます。パルスオキシメータの波形が出なくて「出ないなぁ、他の指に変えて」とか言ってるのは誰もが聞いたことがあると思います。

体動(あばれるさん)

これも経験ありますよね?笑

不穏状態にある患者さんや、認知症で言うことがなかなか聞けない患者さんなどでは脈波が拾えないことが多々あります。ほんと困ることありますよね・・・😅

様々な色素

上述の通り、酸素飽和度は”吸光度”を利用しますので、何らかの色素により邪魔をされてしまうと測定が正しく行われない可能性があります。

代表的なものは以下のものです

測定値に影響を与える色素
  1. マニキュア・ペディキュアなど爪に塗布する色素
  2. インジゴカルミン
  3. メチレンブルー
  4. インドシアニングリーン(ICG)

普通のマニキュアやペディキュアは除光液で落とせるんですけどね〜・・ジェルネイルは簡単に落とせないので困ります・・😅

インジゴカルミンはよく「インジゴ打って〜」「インジゴちょうだい〜」などと内視鏡領域や外科のリークチェック、泌尿器科領域などで用いられますね。

メチレンブルーはメトヘモグロビン血症の治療薬として用いられます。

ɪンドシアニングリーンは肝臓生理のページでも少し触れましたが、肝予備能の評価や、脳血管外科や血管吻合を行うような手術の画像強調剤としても使用されます。

異常ヘモグロビン

二つ覚えておいてください。

メトヘモグロビン血症と一酸化炭素中毒(COヘモグロビン血症)です。

メトヘモグロビンの存在下では、SpO2が85%に近づいていくという特徴があります。メトヘモグロビン血症は主に薬物の副作用として生じます。

一酸化炭素中毒は救急の現場では遭遇することがあるかもしれません(火災やガス漏れなど)。一酸化窒素の特徴は、酸素よりもすんごくヘモグロビンと結合しやすいことです。そのため酸素運搬に多大な障害が生じてしまうのですが、何と「酸素飽和度は普通に出てしまう😨」のです。COヘモグロビンの存在は血液ガス測定で判明します。

 

おすすめの教科書

易しめのやーつ

またまた讃岐先生の書籍なのですが・・笑

基本的なものとしては以下の3冊がおすすめです!看護師さんや研修医にもよくわかるように書かれており、図や写真も豊富です。手術室に一冊は置いておきましょう!(え?もう置いてる?)

本格的なやーつ

一つ目は集中治療領域の有名雑誌「INTENSIVIST」の「モニター」です。予備知識が全くない状態で読むのはしんどい(笑)と思いますが、色々な文献を元に丁寧に書かれています。ただ、少々古いため(2011年)amazonでは新品の取り扱いがありません・・。

二つ目は、新戦略に基づく麻酔・周術期医学シリーズの「麻酔科医のための周術期のモニタリング」です。神経・呼吸・循環・筋弛緩・体温のモニタリングについてきれいにまとめられています。カラーで見やすく、内容もわかりやすく書かれているため、かなりおススメではあるのですが・・・高い!💸(1万円超・・・・!)