麻酔関連薬物

吸入麻酔薬①(総論)-basic-

Contents

このページを読むと解けるようになる(!?)問題

このページを読むと以下の周術期管理チームの過去問が解けるようになると思います。一通り読んだらぜひチャレンジしましょう!

基礎知識
  • 2019-B39の一部
  • 2016-A55
  • 2018-B11の一部
  • 2014-B16の一部
環境に対する影響
  • 2017-A5
  • 2016-A27
  • 2014-B2
MACについて
  • 2018-B6
  • 2015-B12
  • 2014-A20
麻酔導入の速さに影響する因子について
  • 2018-A55
  • 2016-A55
  • 2015-B11
  • 2014-A20

 

ガス麻酔薬と揮発性麻酔薬って何が違うん?(吸入麻酔薬の種類)

 

吸入麻酔薬には2種類あって、ガス麻酔薬と揮発性麻酔薬があります。
ガス麻酔薬とはその名の通り常温、大気圧下(1気圧)で気体の麻酔薬、揮発性麻酔薬は常温、大気圧下で液体である麻酔薬のことです
「常温」というのは正確な定義はないですが、普通の手術室での環境温(25℃くらい?)だと思っていただければ結構です。つまりとても半袖で過ごすことなどできないほぼの寒さ🥶や、真夏の炎天下😓ではないということです。

現在臨床で使用されているガス麻酔薬は亜酸化窒素だけです!詳しくは後述します。
揮発性とは「常温において蒸発しやすいよ」ということです。セボフルランが代表的な揮発性麻酔薬です。ビンの中に液体として入っていますよね。一度くらいこぼしたことがないですか?笑

ここ以降、「吸入麻酔薬」と書いている場合は亜酸化窒素とセボフルランなどの揮発性麻酔薬の両方を含んでると思ってください。揮発性麻酔薬のみに該当する内容は「揮発性麻酔薬」と表記します

 

吸入麻酔薬って環境にも悪いん?(地球環境と職業曝露)

 

皆さん、余剰ガス排泄用の管って知ってますか?これです⬇️

麻酔器(呼吸器)に繋がれた患者さんに投与される酸素や吸入麻酔薬はこの管を通って手術室内から排出されます(その後は吸着剤で処理されたり、大気中に放出されたりします)。

また、吸入麻酔薬は呼吸回路にリークがある時、回路の接続を外した時、マスク換気時(吸入麻酔薬を流しながら換気している場合)には大気中だけでなく手術室内にも流れ出ます
ではその放出された吸入麻酔薬が与える影響について考えたことがありますか?3年目の頃世の中なめていた頃の私にはありませんでした😑笑。

地球規模の環境への影響(壮大・・)

工業用の亜酸化窒素(笑気)は実は地球温暖化対策の京都議定書にも排出規制が記されている、れっきとした温暖化ガスなのです(医療用の笑気は規制外ですが・・)。その温室効果パワーは二酸化炭素の何と300倍💪!大気中ではとても安定していて(分解されにくい)その半減期は約150年👴!長いですね〜。昔に使用されていた亜酸化窒素ガスの多くはまだ大気中を彷徨っているんですね〜👻。そして成層圏にまで達するとオゾン層を破壊してしまいます🛠(オゾン層が破壊されると有害な紫外線が到達してしまいます・・)。

医療用に用いられる亜酸化窒素ガスは、地球環境に与える影響は全体で見れば2.5%と少ないです(ほとんどは医療事業者以外。亜酸化窒素自体の使用もほとんど見ることがなくなっていますので、医療分野だけで見ればますます影響は減少するのではないでしょうか?(半減期が長いため0に近くなるのにはまだまだ時間がかかるでしょうけど)。

セボフルランなども温室効果ガスではありますが、静脈麻酔薬が普及し使用量が昔ほどではないこと、低流量麻酔が行われること(吸入麻酔薬の使用量が減ります)、半減期が数年であることなどからあまり問題となることはないようです。オゾン層への影響もほぼないとされています。
ちなみにこの排出される余剰ガスですが、特に定期的なモニタリングは”必要ない”そうです。

職業曝露(秘密をばらすのはダメですよ)

実は吸入麻酔薬の曝露による影響は放射線曝露と違って正確なデータがありません(放射線被曝については別稿で)。
通常気を遣うのは職場に妊婦さんがいる場合ではないでしょうか?催奇形性や流産のリスクが高まる可能性があるとはよく言われますが、よくはわかっていないようです。

導入時に吸入麻酔薬を用いる場合、どんなに気をつけても漏洩をゼロにすることはできません。今後一定の見解が得られるようなデータが出てくるのかはわかりませんが、それまでは妊娠の可能性がある、または妊娠している看護師さんや麻酔科医、その他の手術室勤務者がいる部屋では吸入麻酔薬ではなく静脈麻酔薬による麻酔を行なっていくべきではないでしょうか?(筆者が個人的に聞いて回った限りでもそうしているところが多いようです)
その他教科書的には判断力、思考速度の低下が見られる可能性についての言及がありますが、こちらもよくはわからないようです。

まとめ

以上のような影響がある吸入麻酔薬ですが、米国麻酔科学会が吸入麻酔薬が含まれる余剰ガスについて以下のような内容の勧告を行なっています。

  1. すべての手術室で余剰ガス排泄装置を備えよー(ただし、亜酸化窒素をほぼ完全に処理できる装置は家が建つくらいの費用がかかり、高級車が買えるくらいの維持費がかかる・・ので多くの施設は大気解放してるでしょう)
  2. 余剰ガスが少なくなるような麻酔法で麻酔しろよー(区域麻酔や静脈麻酔で行う。吸入麻酔薬を使用する際にもマスク換気時は使用しない、など)
  3. 余剰ガスに曝露される人はみんなそれについて勉強せないかんで(教育が必要)。
  4. でも定期的な余剰ガスのモニタリングはいらんで。

とりあえず、ちゃんと勉強しながら麻酔法の選択で減らしましょう、というのが現実的ですね。

 

吸入麻酔薬の特徴ってどんなんなん?(吸入麻酔薬に共通する特徴)

 

みなさんが普段見慣れている麻酔は吸入麻酔と静脈麻酔薬のどちらでしょうか?手術や患者さんが持っている合併症によっては、吸入麻酔主体の方がよい場合や静脈麻酔がよい場合などがありますが、そういった制限のない場合はどちらを選択するかは麻酔科医の好みによることが多いです。昔ながらの先生は吸入麻酔がお好きな印象がありますね笑

それでは吸入麻酔薬に共通する特徴を見ていきましょう(静脈麻酔薬にも少し触れますが、詳しくは別稿にて)。主なものは以下の通りです。

  1. 揮発性麻酔薬は悪性高熱症には禁忌
  2. 揮発性麻酔薬にはそれぞれ専用の気化器が必要
  3. 麻酔(意識消失)に必要な濃度に個人差が少ない。
  4. セボフルランを用いた緩徐導入(slow induction)が可能
  5. 気管支拡張作用があるため、気管支喘息患者には有利に働く(デスフルランを除く)
  6. 揮発性麻酔薬はPaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)の上昇対する換気応答を抑制する
  7. 吸入麻酔薬はPONV(術後悪心・嘔吐)の頻度が静脈麻酔薬より高い

 

それでは1つずつ見ていきましょう!

揮発性麻酔薬は悪性高熱症には禁忌!🚫

まず試験でも頻出なのは、揮発性麻酔薬は”悪性高熱症の原因となり得る”ということです。悪性高熱症の家族歴や素因があるような患者さんでは揮発性麻酔薬の使用は禁忌となります(最近では学会等でもほとんど報告が見られず、半ば都市伝説になりかけている感がありますが・・。悪性高熱症に関しては別稿で解説予定)。

この点、プロポフォールによる静脈麻酔は100%安全😇です。なので、特に禁忌がない場合はPONV対策も含めて全例全静脈麻酔(TIVA)で行っている先生もいます。

揮発性麻酔薬にはそれぞれ専用の気化器が必要

皆さんも⬆️のような気化器を見たことがあると思います。色分けされていることから見ても分かる通り、気化器はセボフルランならセボフルラン用気化器デスフルランであればデスフルラン専用の気化器が用いられます。

一部の麻酔器だと別の揮発性麻酔薬をちがった気化器に入れることができた(注ぐだけなので)のですが、多くの麻酔器では補充を専用のアダプタをつけないとできないようになっています

麻酔(意識消失)に必要な濃度に個人差が少ない

揮発性麻酔薬は意識消失に必要な麻酔薬濃度に個人差が少ないと言われています。つまりこれくらいの吸入濃度だとまず確実に寝ているだろう、とある程度確信が持てるのですが、静脈麻酔薬はそうではありません。お酒に酔いやすい人となかなか酔わない人がいるような感じです。

TCIポンプを用いたTIVAを行う際に中々寝ない人がいるのを見たことがあると思います。そのため、TIVAを行う際にはBISなどのモニタを使用することが多いです。

セボフルランを用いた緩徐導入(slow induction)が可能

小児👦の全身麻酔を行うときに、静脈ラインがあらかじめ確保されていれば成人と同様に急速導入を行うことが多いと思いますが、ラインがない場合にはあの手この手で(笑)子供を泣かせないようにマスクを当ててセボフルランで導入していると思います

セボフルランを使用する理由は、他のイソフルランやデスフルランには気道の刺激性が強いため(気管支痙攣を起こすことがある)です。匂いも臭いのは臭いのですが、セボフルランの方がマシですよね(くさっと思ったとき、あなたは職業曝露してます笑)。小児麻酔の導入では本当に腕が問われますよね〜。

気管支拡張作用があるため、気管支喘息患者には有利に働く

デスフルランを除いて揮発性麻酔薬は気管支拡張作用を持ちます。そのため気管支喘息患者では好んで用いられます。

術中気管支痙攣を起こした場合にも揮発性麻酔薬の濃度を上昇させます。昔、イソフルランを回路に装着できる人工呼吸器(麻酔器じゃなく)があったの、知ってます(サーボ)?

ケタミンには気管支拡張作用がありますが、通常用いられるプロポフォールはその作用がありません。プロポフォール登場以前によく用いられていたバルビツレート(イソゾールやラボナールなど)は気管支収縮作用があります

PaCO2上昇に対する換気応答が抑制される

突然ですが、しばらく息を止めてみてください苦しいですよね?酸素分圧が低下し、二酸化炭素分圧が上昇してくるからです。そうすると、自分で我慢しよう我慢しようと思っても、「ぷはーっ」って息をしてしまいますよね?これが換気応答です

揮発性麻酔薬を投与するとこの換気応答が抑制されてしまいます。ボーッとしたままで、少々二酸化炭素が体に溜まっても息をしようとしてくれないんです。

麻酔からの覚醒時には、静脈麻酔薬やオピオイド、揮発性麻酔薬などによってこの換気応答の抑制が起きるのでなかなか息をしてくれない人が多いんですよね!

PONV(術後悪心・嘔吐)の頻度が静脈麻酔薬より高い

PONVとはpostoperative nausea and vomittingの略で、術後に生じる悪心・嘔吐のことです。全身麻酔終了後、手術室から出る直前に「気持ち悪いです・・・」と言われることありますよね〜。

PONVについては術後管理のお話をするときに詳しく取り上げますが、この頻度が吸入麻酔薬ではプロポフォールなどの静脈麻酔薬よりも頻度が高いと言われています。特に若い女性はPONVのリスクが高いので、TIVAで行うことが多いです。

その他・補足

吸入麻酔薬のダイヤルの単位は「%」です。これはガスの流量に対する%なので、ガスの流量が多くなればなるほど消費量が多くなります。コップ一杯の水量を甘くするのに必要な砂糖の量と、プールいっぱいの水量を甘くするのに必要な砂糖の量が違うみたいなもんです。

MACって何?(最小肺胞濃度について)

私はMac🖥使いの端くれであり、App●e信者🍎(2007年に窓教から改宗)ですが、そのマックではありません。もちろん喉頭鏡のマッキントッシュでも某国のハンバーガーチェーン🍔でもありません。私は関西圏のためマ●ド派ですが。

MACはMinimum Alveolar Concentration(最小肺胞濃度)の略です。これは外科手術などで皮膚切開などの侵害刺激を加えた場合に、50%のヒトで体動が認められない時の吸入麻酔薬の肺胞濃度(%)のことです。吸入麻酔薬ごとに違った数値を持ち、代表的なものについては覚えておく必要があります。

セボフルランは1.7%程度、デスフルランは6.0%程度、イソフルランは1.2%程度、亜酸化窒素は105%程度です。この値が小さいということは、少ない濃度で一定の麻酔作用があるということなので、より強い(力価が高い)麻酔薬と言えます(麻酔作用の強さの指標となる)。
ただし、揮発性麻酔薬には鎮痛作用がない(あってもとてもわずか)ため、適切な麻酔のためには他に鎮痛薬が必要になります(フェンタニルやレミフェンタニル、硬膜外麻酔や末梢神経ブロックなど)。つまり、MACは鎮痛の指標としては使えません

MACは変動するよ

先ほどおおよそのMACの値を示しましたが、MACの値は増えたり減ったりします先ほどの1MACの値は40〜60歳くらいの値です。この変化をもたらすものについては試験でも問われます。
MACが低下する(より少ない濃度で麻酔がかかるようになる)要因として代表的なものには、妊娠(エストロゲンの作用が関与しているらしい)、加齢、低体温、他の麻酔薬・鎮痛薬の併用などがあります。
逆にMACが増大する(麻酔により高い濃度が必要になる)要因として代表的なものには、体温上昇、慢性アルコール中毒などがあります。
補足として、高血圧や性別、酸塩基平衡異常(代謝性アシドーシスなど)、貧血では変化しません

普段の麻酔でMACが話題に上がることはあまりないとは思いますが、「あぁ、硬膜外麻酔してたらこの程度の濃度でいいのかぁ」とか、「セボ(デス)をこの濃度でいってるのはブロックしてるからですか?」など担当麻酔科医に聞くと「お、勉強してるのかな?」と思ってくれるかもです笑
あ、ちなみに静脈麻酔薬にはMACはないので気をつけて。

 

吸入麻酔薬による麻酔導入の速さに影響するもの・・ってそんなん覚えないかんの?

はい。少なくとも試験的には笑

ここで吸入麻酔薬①(概要)は終了です。もうひと頑張りᕦ(ò_óˇ)ᕤです笑。
はじめに、ここでは濃度に代わりに分圧という言葉を使用します(気体の分圧は濃度に比例します)。

まず導入が速いとはどういう事でしょうか
それは中枢神経(脳)における吸入麻酔薬の分圧がある一定の値に達するのが速い、ということです。
吸入麻酔薬は麻酔回路(の気化器)からやって来て、肺胞に到達します。そこで肺毛細血管内の血液に溶け込み、血流に乗って(肺毛細血管→肺静脈→左心房→左心室→大動脈→脳)脳に運ばれ(そこで溶け出し)ます。初めは肺胞内の分圧が一番高く、次に血液、最後に脳ですが、一定の時間が経つとこれらが等しくなります(平衡に達する)。この平衡状態に達した時(血液に溶ける量と血液から出てくる量が同じになった時)が導入が完成する時です。
わかりにくいでしょうか?(実際にわかりにくいと言われました😞笑)

それでは麻酔に必要な(脳での)吸入麻酔薬の分圧を仮に10とします。麻酔回路内の吸入麻酔薬分圧が10になるように吸入麻酔薬を投入すると肺胞に10が到達しますが、すぐに一部が血液に溶け、また肺に返ってくる血液の中には初めは吸入麻酔薬は含まれていないので肺胞内の分圧もすぐには10になりません。当然血液中の分圧もまだ10に達していません。

さらに10に満たない吸入麻酔薬が脳に到達します。この時点での吸入麻酔薬の分圧は肺胞>血液>脳ですよね。その後も肺胞に吸入麻酔薬を送り続けると先に肺胞と血液両方の分圧が10になり、遅れて血液と脳における分圧も10になっていきます。これが導入の完成です。ただ、脳内の麻酔薬の分圧を直接測ることができないので、肺胞内の分圧、実際には呼気の吸入麻酔薬分圧(濃度)で代用しているのです。

つまり、すごく簡単にまとめると、肺胞内吸入麻酔薬分圧がどのくらい速く上昇するかが、麻酔の導入の速さに影響する(分圧上昇が速いと導入も速い)ということです
とうわけで吸入麻酔薬で導入するときに、どれくらい効いてるかな〜、または覚醒させるときに、どのくらい吸入麻酔薬が出て行ってくれたかな〜と麻酔科医が見ている👀のは、呼気の吸入麻酔薬濃度(モニターでEtSEVなどと表示されてるのでよく見てみてください)なんですよ。

以上の基礎知識を応用すればこの分野のポイントは理解できるはずです。

試験に問われているポイントは以下の7つです。7つも?と思うかもしれませんが、1つずつ見てみるとそれほど難しくないので丸暗記する必要はありません。

  1. 血液/ガス分配係数が小さいと導入・覚醒が速い
  2. 肺胞換気量が大きいと導入・覚醒が速い
  3. (試験では未出題だけど)吸入麻酔薬の濃度が高いと導入が速くなる。
  4. 心拍出量が小さいと導入・覚醒が速い
  5. 機能的残気量が大きい(肺気腫なども含む)と導入・覚醒が遅い
  6. 体温が高いと導入・覚醒が遅い
  7. 亜酸化窒素を併用すると導入が速い(二次ガス効果)

 

それでは1つずつ見ていきましょう!

血液/ガス分配係数が小さいと導入・覚醒が速い

おそらく真面目に教科書を読んだことがなければこの言葉は馴染みがないと思います。
簡単に言うと、吸入麻酔薬(ガス)が血液にどのくらい溶けやすいかを表す指標です。具体的には1気圧37℃で1mlの血液に溶解する吸入麻酔薬の量(ml)のことです。つまりこの値が小さければ溶けにくいということです。

肺胞までやって来た吸入麻酔薬が血液に溶けやすいと、すぐに血液に乗ってどこかに行ってしまうので肺胞内の濃度は上昇しにくくなります。そのため導入は遅くなります。あれ?溶けやすい吸入麻酔薬がすぐに溶けて脳に行くなら導入は速くなるんじゃないの?と思うかもしれませんが、血液に溶けやすいという事は、脳に行っても血液から吸入麻酔薬は「出て来にくい」のです。出て来てもすぐに血液に溶けてしまうので、脳内の濃度が上昇しにくいのです。ここ注意してください(イメージしにくいですね〜)。
ちなみにこの分配係数は薬理学的な性質であるため、他の麻酔薬の併用やその他の要因により変化することはありません(MACとは違って)。MACとは違うのだよ!MACとは!(ラン●・●ル)通じるかな・・

細かなことは置いておくとして笑、まずはこの数値が小さければ小さいほど麻酔の導入と麻酔からの覚醒が速くなると言う事を覚えましょう。
それぞれの分配係数を暗記する必要はありませんが(専門医試験では覚えておく必要があります)、亜酸化窒素とデスフルランは同程度に小さく(亜酸化窒素が0.47、デスフルランが0.45)、それにセボフルランが続き(0.65)、イソフルランが最も大きいです(1.4)。※ハロタンやエンフルランなどは除く。

つまり、デスフルランが導入・覚醒最速です(セボフルランも昔の揮発性麻酔薬と比べるとものすごく速いんですけどね!)

肺胞換気量が大きいと導入・覚醒が速くなる

これは呼吸の量が多いとそれに付随して取り込む吸入麻酔薬の量は多くなり、肺胞内の濃度も上昇しやすいのでイメージがしやすいでしょう(アルコール濃度が低いお酒でもガブガブ飲んだら早く酔っ払うようなもんです🍻)。麻酔を切った場合もどんどん出ていくというイメージでいいでしょう。

吸入麻酔薬の濃度が高いと導入が速くなる

濃度効果、なんて名前がついていますが、これは直感的に分かりますよね。強いお酒🍶をぐっと飲むとすぐに酔っ払う🥴みたいなもんです。

心拍出量💓が少ないと導入が速くなる

これも少々イメージが難しいのですが。一般的に体循環と肺循環の血液量は同じであるため、心拍出量が少ないという事は、(シャントなどの特殊な状態でない限り)肺血流量が少ないと言えます流れが少ないと、時間当たりの血液に溶けて持っていかれる量が少ないので、肺胞内の濃度が上昇しやすくなります(高心拍出量だと血液に溶け込む量が多くなり、肺胞内の吸入麻酔薬分圧の上昇が遅くなる)。

機能的残気量が大きいと導入が遅くなる

機能的残気量が多いということは、それだけ肺にスペースがあるということです。そこを吸入麻酔薬で満たさなければならない分時間がかかるので、肺胞内濃度の上昇に時間がかかります(機能的残気量については呼吸生理のところで説明します)。
COPD(慢性閉塞性肺疾患)の代表である肺気腫は機能的残気量が大きくなるため、導入が遅くなります。

体温が高いと導入が遅くなる

体温が上昇すると前述のMACは上昇する(麻酔に必要な吸入麻酔薬濃度が上昇する)ため、導入は遅くなると考えられます。

亜酸化窒素を併用すると導入が速くなる(二次ガス効果)

これも試験には比較的よく出題されます(実際には小児麻酔の緩徐導入を除いてほとんど使用されていませんが)。

(比較的高濃度の)亜酸化窒素と揮発性麻酔薬を併用すると、導入が速くなります。これを二次ガス効果と呼びます。亜酸化窒素と揮発性麻酔薬が肺胞に到達すると、亜酸化窒素は急速に肺胞内から血液に移行する性質を持つため、いなくなった亜酸化窒素の分だけ揮発性麻酔薬の分圧が上昇するためです

 

まとめ

いかがだったでしょうか?

あまり普段は意識しないようなことだと思いますが、これらの知識をもっておくことで、日常が少し変わって見えてくるかも(?)しれません。

オススメの薬物ハンドブック