麻酔関連薬物

静脈麻酔薬・オピオイド(各論②)-basic-

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フェンタニル
  • 2017-A24の一部
  • 2016-A54の一部
  • 2014-A34の一部
レミフェンタニル
  • 2019-B19
  • 2017-A24の一部
  • 2016-A54の一部
  • 2015-A19の一部
  • 2015-B14
  • 2014-A34の一部
モルヒネ
  • 2017-A24の一部
ナロキソン
  • 2017-B5の一部
  • 2015-A19の一部
  • 2015-B18の一部
  • 2014-A34の一部
ペチジン・ペンタゾシン
  • 周術期管理チーム試験には出題今のところなし(でもよく使う薬だから勉強しよう🤗)

 

フェンタニル

レミフェンタニル(商品名:アルチバ)が発売されるまでは、日本の手術麻酔に使用する麻薬では長らく主役を担ってきた偉大😤な麻酔薬です(海外ではフェンタニルからレミフェンタニルの間にスフェンタニルやアルフェンタニルなどの麻薬がありました)。

レミフェンタニル登場後は、主に手術終了時〜術後の鎮痛が主な使用目的になってきましたね(心臓外科手術ではまだまだ使用量は多目だとは思いますが)

※ペインクリニック領域での使用に関しては別稿で掲載予定

  1. 私は好き🤗
  2. 循環抑制が弱い(だから心不全患者や心臓外科手術では好まれる)
  3. 代謝産物は活性を持たない(腎機能低下患者でも安全)
  4. 硬膜外腔にも、くも膜下腔にも投与可能
  5. IV-PCAで大活躍🤩

循環抑制が弱いよ!😄

これがフェンタニルの一番便利な点ではないでしょうか。循環抑制が弱いため、心不全患者や、重症弁膜症患者の一般手術の導入、ショック患者の術中管理、心臓血管外科手術などで好んで用いられます。これに比べるとやはりレミフェンタニルは血圧下がるな〜、という感じがすごくします。

心拍数も多少は落ちますが、大したことはありません。これもレミフェンタニルはかなり徐脈傾向になります(導入時の投与量が多いとよく徐脈になっているのを見ると思います)。

ただ、頻回大量に投与したり持続投与を行った場合には切れが悪いので、術後麻酔下でICUに搬入するなど以外では投与量を考えないとなかなか覚めなくなるという欠点はあり、ここに関してはレミフェンタニルに軍配が上がります。

代謝産物は活性を持たない

フェンタニルの代謝産物は活性を持ちません(肝臓で代謝)。モルヒネには強い活性代謝産物(モルヒネ-6-グルクロニド)があり、腎機能障害がある場合には蓄積が問題となります。この点フェンタニル代謝産物は活性がないため、腎機能障害があっても基本的に安全に使用ができます。

硬膜外腔にも、くも膜下腔にも投与可能

読んで字の如しですが。特に硬膜外フェンタニルは術後鎮痛に用いられることが多いと思います。術後の硬膜外麻酔のメニューを見ると特に腹部手術や胸部手術の場合は入っていると思います(0.2%ロピバカインや0.25%ポプスカイン単独だとちょっとつらし)。

くも膜下投与は帝王切開などで主に用いられます(子宮牽引時の不快感などを抑制する効果があるようです)。私は0.5%ブピバカイン(高比重)に0.015mg程度を混ぜて投与しています。

IV-PCAに大活躍!🤩

みなさんご存知のIV-PCA(ご存知ですよね?😅)。機械式のものが一番良いですが、バルーンタイプのものや硬膜外投与に使用するタイプのものを流用するものなどいくつか種類があります。

様々な部位の術後鎮痛に広く利用されています。特に抗血栓療法のために硬膜外麻酔を行えない場合には重宝しますよね(結構痛がることも多いですが・・)。IV-PCAに関してはまた別稿で詳しく取り上げたいと思います。

 

レミフェンタニル

Ultimate TIVAからったのが商品名の由来です(だったかな・・?)。昨今の麻酔法のあり方を変えてしまったと言っても過言ではない、究極のオピオイドかもしれません。肝腎機能関係なく使用でき、速やかに代謝され蓄積性もない、投与中止すればすぐに効果が無くなる。循環抑制の強さを除けば理想の麻酔薬に近いとも言えるでしょう。

発売してからはすでに10年以上経過していますから、第一線で働かれている先生方ではレミフェンタニルがない麻酔はあまり想像できないかもしれません。あんまり「俺らの時代には〜」とか言ってると懐古厨😭とか言われてしまうのでやめときます笑。

  1. オピオイド受容体の中でも主にμ(ミュー)受容体に作用する。
  2. 血中や組織中の非特異的コリンエステラーゼで速やかに分解される。
  3. 1のため、作用持続時間はとても短い投与中止後3〜5分後には血中濃度が半減する。そのためシリンジポンプによる持続投与が必要)
  4. 1のため、肝機能・腎機能に左右されない。(透析患者でもOK👌)
  5. 術後鎮痛は期待できないので、IV-PCAや持続硬膜外麻酔など他の手段が必要。
  6. 添加物として神経毒性を持つグリシンが含まれているため、くも膜下や硬膜外には投与禁忌となっている。
  7. 呼吸抑制・循環抑制作用が強い
  8. 以上の作用より癌患者の疼痛管理には全く向かない

オピオイドμ受容体に作用する

フェンタニルやモルヒネ、レミフェンタニルなどのオピオイドは体内にあるオピオイド受容体に作用することで効果を発揮します。麻酔科専門医試験ではオピオイド受容体に関しても詳しく出題されています(詳しくは今後advancedで掲載予定)

オピオイド受容体には主にμ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパ)の3種類があり、強い鎮痛作用や呼吸抑制などのメインの作用はμ受容体(μ受容体はさらに分類されますがここでは割愛)によるものです。

作用時間が短い

レミフェンタニルは作用時間が短く、投与中止後の血中濃度の半減期(context-sensitive half-timeと言う)は3〜5分です。年齢にもあまり左右されません。この速さは代謝を肝臓や腎臓に依存せず、血中や組織中にある非特異的コリンエステラーゼと呼ばれる物質により速やかに加水分解・代謝されるためです。そのため肝機能障害や血液透析を行っている患者でも問題なく使用できるという利点があります。

そのため術中にはボーラス投与を行ってもすぐに切れてしまうためにシリンジポンプによる持続静注を行います。

また術後鎮痛には全く役立たず笑なので、フェンタニルやNSAIDs、汗とアミノフェン、硬膜外鎮痛などその他の手段が必要になってきます。

 

モルヒネ

フェンタニルと並んでオピオイドオブオピオイドと言ってもよい有名な薬です。一般の人でも普通に名前は聞いたことがあると思います。主に癌性疼痛管理におけるメインの麻薬の1つですね。

周術期管理チーム試験では腸管蠕動を抑制する(だから便秘になる)と硬膜外投与に関することしか出題されてませんが・・・。

  1. フェンタニルやレミフェンタニルに比べると一般手術の麻酔にはあまり用いられていない(施設によるかな?)
  2. 癌性疼痛管理では超重要
  3. 主に肝臓で代謝されて、強い活性を持つM-6-G(モルヒネ-6-グルクロニド)と言う代謝産物を生じる
  4. 3のため、腎機能障害のある患者では注意を要する。
  5. 様々な副作用があり、緩和ケア領域でもその対策が問題になる(特に便秘
  6. 硬膜外投与も可能

強い活性を持つ代謝産物が生じる😱

モルヒネは主に肝臓で代謝されますが、その際にM-3-GとM-6-Gという代謝産物が生じます。代謝産物のほとんどを占めるM-3-Gの方は活性がありませんが、M-6-Gは強い活性をもち、その作用はなんと親であるモルヒネよりも強力です。

腎機能が低下するとこのM-6-Gが蓄積することで、呼吸抑制や傾眠傾向、悪心・嘔吐などが強く現れてくるため、腎機能に問題のある患者への投与はその後の観察が重要になってきます。

モルヒネは副作用がいっぱい。便秘には要注意

オピオイド自体いろいろ副作用がありますが、モルヒネは作用時間も長く、緩和ケア領域では長期に持続的に使用されるので、副作用対策が重要になってきます。詳しくは緩和ケア領域の投稿で取り上げますが、腸管蠕動抑制による便秘対策が重要になってきます(手術時の少量投与ではほとんど問題にならないですが)。

硬膜外やくも膜下投与での作用の特徴

モルヒネはフェンタニルと同様に硬膜外投与が可能ですが、その作用の現れ方に違いがあります。

モルヒネは脂溶性が低く(脂に溶けにくい。水溶性とも言う)、フェンタニルは脂溶性が高い薬物です。そのためフェンタニルは組織や血管に取り込まれやすく、その効果が及ぶ範囲は穿刺部位に左右され、離れた皮膚分節には効果が及びません(例えば腰の低い場所から刺しても胸の領域までは効かない)。

逆にモルヒネは脂溶性が低いため、すぐには組織に取り込まれません。そのため緩徐にくも膜下腔に移行していくため離れた皮膚分節にも効果が及びます

詳しくはまた脊髄くも膜下麻酔・硬膜外麻酔の投稿で取り上げようと思います。

 

ナロキソン

オピオイドの拮抗薬です。普段あまり目にすることはないと思います。フェンタニル、レミフェンタニル、モルヒネをはじめとして様々なオピオイドの作用を拮抗することができます。が、いくつか注意点があります。

  1. オピオイドの作用を拮抗することができる(特に呼吸抑制の作用に)。
  2. ナロキソンの半減期は20〜60分程度と短い。
  3. まれに重篤な副作用あり。

半減期が短いための問題点

ナロキソンの半減期は20〜60分。これはモルヒネはもとよりフェンタニルよりも短いです。つまり、フェンタニルやモルヒネの過量投与により呼吸抑制が生じた時などに投与すると、一旦は呼吸抑制からは回復しますが、すぐに効果が切れてしまい再び呼吸抑制が生じてしまう可能性があるということです(そのためそのような場合は必要に応じて持続投与が必要になる場合があります)。ただ、通常の術後鎮痛にフェンタニルやモルヒネを用いている場合、それほど呼吸抑制が問題になることはないので、あまり見る機会はないと思いますが。

これはミダゾラムなどベンゾジアゼピン系薬物の拮抗に用いるフルマゼニルのお話をした時と同様の問題です。拮抗薬を使用した際にはその後の観察が重要になります。

重篤な副作用の報告あり😱

ナロキソンの投与により血中カテコラミン濃度が上昇します。これは鎮痛作用の消失や、突然の覚醒、交感神経系の興奮などが原因です。すると心拍数や血圧の急上昇が生じ、その結果として肺水腫や心室細動、心停止を起こすと言う報告があります。

心血管系に問題のない患者ではそれほど問題にはなりませんが、心不全や心筋梗塞の既往があるような患者では用いない方が無難です。

 

その他のオピオイド

周術期管理チーム試験では出題がないのですが、よく用いられるペチジンとペンタゾシンも念のためちょっとだけポイントを抑えておきましょう。

ペチジン(商品名:オピスタン)

一つだけ覚えてください。シバリング時に使います!笑

 ペンタゾシン(商品名:ペンタジン、ソセゴン)

救急領域ではよくこれの中毒患者がいて難儀することがあります・・😓

ポイントは、天井効果がある(投与量を増やしてもあるところから作用が頭打ちになる)ことです。

 

オススメの薬物ハンドブック