麻酔関連薬物

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)-basic-

手術室・ER・一般外来・一般病棟など、いろいろなところで使用されるNSAIDsについてのお話です。

NSAIDsとはNon-Steroidal Anti-Inflammatory Drugsの略で、日本語で言うと非ステロイド性抗炎症薬という意味になります。意外とこういうの言えない人が多いんですよね😅

例によって専門医試験では詳しく聞かれますが、周術期管理チーム試験では、副作用と投与するのが好ましくない所見など、実践に則した内容になっており、深くは聞かれておりません。しっかりおさえておきましょう!

また、アセトアミノフェンも周術期に使用される代表的な鎮痛・解熱薬(抗炎症作用はない)ですが、周術期管理チームテキストにはその記載がありません・・。そのため一応advancedで扱うことにしますので、しばしお待ちください。

このページを読むと解けるようになる(!?)問題

NSAIDsの副作用について
  • 2018-B37
NSAIDsの投与が好ましくない所見
  • 2019-B29
  • 2016-B34

 

NSAIDsの代表的な副作用

NSAIDsは使い勝手の良い解熱鎮痛薬であり抗炎症薬ではあるのですが、注意すべき副作用がいくつかあります。細かなものをあげるとそれなりの数になりますが、普段気をつけるべき副作用は以下の通りです。

NSAIDsの代表的な副作用
  1. 胃腸障害(消化管出血)
  2. 腎機能障害
  3. 止血機能低下(出血傾向)
  4. アスピリン喘息(稀だが重要) 
  5. 血圧低下 etc

NSAIDsはアラキドン酸カスケードと呼ばれる一連の化学反応に必要なシクロオキシゲナーゼ(1、2、3があり、NSAIDsでは1と2が重要)という酵素を阻害することで様々な種類のプロスタグランジンやトロンボキサンの合成を抑制し、いろいろな作用・副作用を生じます。教科書などではよくCOX-1やCOX-2と表記されることがあります。

多くのNSAIDsはCOX(シクロオキシゲナーゼ)-1とCOX-2の両方を阻害しますが、上にあげたセレコキシブはCOX-2に対する選択性が高い薬剤でCOX-1阻害に由来する副作用が少ないという利点があります。

胃腸障害

最も多い副作用です。「なんか胃がもたれる・・痛い😫」程度から、「潰瘍からの出血🩸!」まで重篤度は様々です。このため、病院などでは胃薬と一緒に処方されることが多いですよね(その有効性については色々と議論があるようですが・・)。

これは抑制されるプロスタグランジンの1つが胃粘膜保護作用に関わっているためです。なので、現在進行形で胃炎や胃潰瘍がある患者にはNSAIDsは投与してはいけません!(アセトアミノフェンなど他の鎮痛薬を使用しましょう)。

腎機能障害

抑制されるプロスタグランジンの一つが腎臓の血流に関与しているため、NSAIDs投与により腎血流量が低下してしまい、尿量減少なども生じることがあります。元々腎機能が悪い患者さんに不用意に投与してしまうと最悪腎不全の状態になってしまう恐れがあります。浮腫や高血圧も生じることがあります。

クレアチニンやクレアチニンクリアランスなど腎機能に関わるデータが悪化しているまたは悪化傾向にある患者さんへの投与は控えましょう

止血機能低下

シクロオキシゲナーゼ阻害により血小板凝集に関わるトロンボキサンが抑制されるため止血機能に異常が生じます(血小板凝集抑制作用)狭心症や心筋梗塞など冠動脈(心臓を栄養する血管)疾患をもつ患者にアスピリンが投与されるるのはこの副作用を利用したものです。

最も、通常用量のNSAIDsの投与では、元々止血機能異常がある患者以外ではそれほど問題になることはありません。

血圧低下

それほど重篤な血圧低下はあまり起こりませんが、血管拡張や、高熱時の使用時に大量に発汗し循環血液量が減少したりして血圧が低下することがあります。

高齢者の高熱時の使用には気をつけましょう。

アスピリン喘息

NSAIDs処方時に「喘息はお持ちですか?」と聞く理由です。アスピリンをはじめとするNSAIDs投与により気管支喘息発作が誘発され、アスピリン喘息と呼ばれています。

30〜40歳以降に発症することが多く慢性副鼻腔炎と関連があると言われています。慢性副鼻腔炎や鼻茸の手術歴がある場合なども注意しましょう。

アセトアミノフェンは高用量投与でなければ安全なようですが、注意しましょう。

気管支喘息の治療に副腎皮質ステロイドが使用されることがありますが、種類によっては症状を増悪させてしまうことがあるので注意が必要です。ちなみにサクシゾンやソルメドロールなどのコハク酸エステル型ステロイドはNGで、リンデロンやデカドロン、水溶性ハイドロコートンなどリン酸エステル型のものはOKです。

 

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