合併症管理

アナフィラキシー:①概要

こんにちは〜。
ようやく投稿再開します!
新型コロナウイルスワクチンの接種も始まって、一時期アナフィラキシーに関するニュースもよくされていました。最近あまり見ないですが・・。
そこで何回かに分けてアナフィラキシーについて簡単にまとめていきます。

 

はじめに『まとめ』

 

まとめ
  1. 典型的なアナフィラキシーは即時型の全身性のアナフィラキシー反応で超危ねぇ!
  2. 臨床的にはアナフィラキシーもアナフィラキシー様反応も一緒!気にすんな!
  3. 周術期では大体1〜2万例に1例起きるよ!
  4. 周術期にアナフィラキシーを起こしやすいものを覚えておいてね。筋弛緩薬、ラテックス、抗菌薬など。

 

そもそもアナフィラキシーって?

 

まぁ医療従事者で知らない人はモグリだと思うのですが・・笑。念の為。

アナフィラキシーとはざっくり言うと全身性の重症アレルギー反応のことです。軽いアレルギーというとなんかちょっと蕁麻疹出たとかで何事もなくすみますが、

アナフィラキシーでは皮膚や気道・呼吸器系、循環器系、消化管など多臓器にわたる障害を引き起こします。対応が遅れると上気道閉塞による窒息や循環虚脱によるショックで死にいたる可能性のある恐ろしい病態です😫。

典型的なアナフィラキシーは、原因物質が免疫細胞(肥満細胞や好塩基球)に存在するIgE抗体と反応することによって、それらの細胞から過剰にヒスタミンやトリプターゼといったさまざまな炎症性のケミカルメディエータを放出することで生じます。ERにも搬送されますが、手術中に生じた場合などは患者の訴えがないため、バイタルサインや呼吸状態の異常を認めた場合は積極的に疑って早期発見することが大事になります。

 

アナフィラキシー様反応って聞いたことがあるけど・・どう違うの?

 

アナフィラキシーは厳密には4種類あるうちのアレルギー反応のⅠ型(Coombs&Gellの分類)を指します。この反応は上記のようにIgEが関与します。

広義のアナフィラキシーには免疫性でもIgEを介さない反応や、原因物質が直接免疫細胞を活性化する非免疫性のものが含まれ、これらを従来はアナフィラキシー様反応と呼んでいました

しかし、その臨床像や治療方法に違いがなく、臨床的には鑑別が困難であるため現在ではどちらもアナフィラキシーと呼ばれます。厚生労働省も両者をアナフィラキシーで統一するように勧告を出しています。

厳密にはアナフィラキシー様反応の方が重症度が低いことが多かったり、また事前に原因物質による曝露がなくても生じたりといった違いはありますが、現場での対応は同じです。

 

周術期のアナフィラキシーはどのくらいの頻度で起こるの?

 

日本や海外のデータなど色々あり、それぞれそこそこ広い幅がありますが、とりあえず1〜2万例に1例(死亡率はヨーロッパの疫学調査で3〜10%)と覚えておきましょう。しょっちゅう出会うほどではありませんが、年間の手術件数を考えるとそれほど低い数字ではありません。

ちなみに頻度には性差があり、女性の方が3倍ほど高いと言われています(化粧品や薬剤に含まれる共通物質により感作されている可能性)。

 

アナフィラキシーの原因物質にはどのようなものがあるの?

 

原因物質は大きく分けると食べ物、薬物・医療材料、昆虫毒によるものがあります。

食べ物

食べ物ではエビなどの甲殻類、ピーナッツ、卵、蕎麦粉、小麦粉などがあります。まれに小学校などの給食に含まれていることに気がつかずに食べて救急搬送されたというニュースを見かけることがあると思います。

昆虫

昆虫ではハチ🐝(ミツバチ、スズメバチ、アシナガバチなど)やアリ🐜などです。ハチ刺傷によるアナフィラキシーは私も研修医の時に出会った経験があります。原因はしばらく不明だったのですが、症状が軽快して抜管したあと、患者さんが「ハチ🐝や、ハチ🐝に刺されたんや!」とおっしゃってました。

薬物・医療材料

そして私たちが関与する周術期にはさまざまな薬物が使用され、そのどれもが原因にはなりえます。その中でも頻度が高いものは筋弛緩薬(第一位。60〜70%程度を占めるとも)、ラテックス(第二位。10〜20%程度)、抗菌薬(第三位。10%程度)です。これらはIgEが関与する即時型のアレルギーであることが多く、迅速な対処が求められます

最近ではロクロニウムの拮抗薬であるスガマデクスのアナフィラキシーの報告も多数上がって来ています。

その他

その他の物としては、HESなどの人工膠質液やプロポフォールなどの鎮静薬、フェンタニル・モルヒネなどのオピオイド、消毒薬、造影剤、血液製剤などがあります。

これらに関する詳しい説明は次回以降の投稿で取り上げます

参考文献・図書

4. LiSA 2017年10月 p1008-1012
10. 麻酔偶発症AtoZ p624-631
16. 麻酔科トラブルシューティングAtoZ p198-199, p206-207 p502-503
23. 麻酔科臨床SUMノート p148, p244-245