はじめに「まとめ」
- 検査にはin vivo検査(生体での検査)である皮膚試験(プリックテストや皮内テストなど)、in vitro検査(試験管内の意味で要は生体外での検査)である特異的IgE抗体測定や好塩基球活性化試験などが行われルガ、in vivo検査が一般的。
- 急性期には血中のヒスタミンやトリプターゼの測定も行われる。
- 抗原の特定のためのin vivo検査はアナフィラキシー発症後4〜6週間後に検査を行う。プリックテストと皮内テストが一般的
- in vivo検査ではアナフィラキシー発症に注意
アナフィラキシー時に行われる検査
ヒスタミンとトリプターゼ
今までの投稿にも出てきたケミカルメディエータであるヒスタミンやトリプターゼですが、アナフィラキシーの診断のために採血して検査されます。ただ・・
ヒスタミンの半減期は短い!
ヒスタミンの半減期はわずか15〜20分と短いため(もっと短いとする教科書もあり)、診断の一助として採血するのであれば発症後早期の採血が必要になります。ただし、重症例では比較的長時間(といっても2時間程度ですが)上昇しているようです。
バタバタしている時に時期を逸さずに採血することは慣れていないと意外に難しいと思います。
というわけで急性期の血液検査としてはトリプターゼ
肥満細胞から脱顆粒により放出されるトリプターゼですが、ヒスタミンと違って半減期が1.5〜2.5時間と長めです(血中濃度のピークは1時間後くらい)。しかもアナフィラキシーの重症度と相関があります(重症だと値が高くなる)。ただ・・
感度はあまり高くありません(つまり、上がってないからアナフィラキシーじゃない、とは言えないということ)。低血圧の発現と相関があるとされているため、ショック状態を呈していない患者では増加しないようです。13)
皮膚試験(抗原特定のための試験)
抗原特定のためには各種皮膚テストが行われますが、これらを行うタイミングとしてはアナフィラキシー発症から4〜6週間後に行われます。
時間を空ける理由はアナフィラキシー後はしばらくの間は細胞内のヒスタミン貯蔵量が減少しているため、皮膚試験を行っても偽陰性になることがあるからです。
抗ヒスタミン薬を内服している患者では検査前72時間は中止とします。16)
ここでは一般的によく行われるプリックテストと皮内テストを取り上げます。そのほかのアレルゲンの検査としてはスクラッチテスト(掻皮試験)やアレルギー性接触性皮膚炎(遅延型アレルギー)のパッチテストなどがあります。
皮膚試験を行う上で最も気をつけなければいけないことは、アレルゲンを用いるためアナフィラキシーを起こす可能性が常にあるため、常に対処の準備と心構えが必要なことです。
一般的に行われている検査ではありますが、実は使用する試薬の希釈濃度、用いられる最高濃度に国際的な基準がないこと、皮膚試験自体の精度には各施設間でばらつきがあるため、それが結果の解釈に影響を与えることがあるという問題点もあります。14)
プリックテスト
プリックテストは皮膚の表面に試薬を滴下した後、その部位の皮膚表面を針でプチっと刺してアレルゲンを皮膚内に吸収させてその反応を見るテストです。
アレルゲンの試薬、陽性コントロール(塩酸ヒスタミン1%溶液)、陰性コントロール(生理食塩液)を用いて行います。
判定は15〜20分後に行い、膨疹(ぷっくり)の大きさを陽性・陰性コントロールと比較して行われます。
陽性基準は陽性対象の少なくとも半分以上、陰性対象の少なくとも3mm以上とされています。
皮内テスト
体内に入る薬液の量はプリックテストよりも多くなるため、アナフィラキシーのリスクはより高くなります。そのため疑わしいアレルゲンの検査が陰性であった場合に行われることが推奨されています。14)
プリックテストよりも感度が高いですが、特異度が低いという特徴があります。
皮内テストでは通常その薬物の1,000倍希釈溶液(筋弛緩薬の場合は10,000倍)を作成し、その0.02ml程度を皮内注射します。
プリックテストと同様に陽性コントロールとしてヒスタミン溶液、陰性コントロールとして生理食塩液を用います。
陽性基準は膨疹9mm以上、発赤20mm以上のどちらかを満たす場合です。
その他の試験
その他の試験としてin vitro検査の特異的IgE抗体測定や好塩基球活性化試験が行われることがあるが、通常臨床ではあまり一般的ではない。